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オーダーメードの写真撮影ツアー:新たな視点で東京を見つめる
今回、私は写真の腕をあげるため、ジャパノラマが企画する「フォトウォーク」に参加することにしました。品川区に拠点を置くジャパノラマは、“オーダーメードの写真撮影ツアー”を運営する企業。顧客の要望に応じた散策ルートを提案してくれます。しかし、経験豊富な写真家がどのような場所を撮影対象に選ぶのかに興味があった私は、今回のツアールートはジャパノラマに任せることにしました。数回のメールのやり取りでアレンジされたルートは、Googleマップで事前に確認することができました。
ガイドをしてくれたのは、イギリス人の写真家兼写真講師のアルフィー・グッドリッチさんです。これまでイギリス王室のメンバーや、2015年に来日したケンブリッジ公爵の公式カメラマンを務めるなど、数々の著名人を撮影してきました。現在はスウェーデンのカメラメーカー、ハッセルブラッドのブランドアンバサダーも務めています。アルフィーさんにとって撮影ツアーは、レンズ越しに様々なものを見つめてきた自身の経験を、次の世代に伝えていく一つの手段なのだそうです。
ツアー当日、私を含めた数人のツアー参加者が有楽町駅の高架下に集合すると、アルフィーさんは早速、数十年掛けて積み上げた東京に関する知識の一部を披露してくれました。お気に入りの撮影スポットや飲食店、そして街並みを眺めるのにおすすめの場所などです。
皇居に向かう多くの旅行者を横目に、私たちが最初に立ち寄ったのは「東京国際フォーラム」です。1996年に完成した「東京国際フォーラム」は、ウルグアイ人の建築家、ラファエル・ヴィニオリ氏により設計されました。2020年には、東京オリンピックの会場として使用されるそうです。
ガラス棟に上がってみると、この場所がツアーに組まれた理由が分かりました。都会の喧騒は遠のき、ガラスと鉄柱が頭上を覆う空間に心を奪われていた私は、アルフィーさんにカメラを見せるように言われるまで、撮影に来たことを忘れかけていました。少し驚かされたのは、デジタル一眼レフカメラを持ってきたのは私だけで、他の参加者が手にしていたのは、スマートフォンか一般的なデジタルカメラだったということです。けれどもアルフィーさんは、良い写真を撮るのに大切なことは、カメラの性能ではなく、自分なりの視点を見つけることだと、私たちに教えてくれました。
東京国際フォーラムの上層階を散策し、この日初めてのテスト撮影を始めると、アルフィーさんは、カメラの設定を確認するように言いました。恥ずかしいことに、私は長年そのカメラを愛用していながら、フルオートモードを解除したことがありませんでした。ピントにしても絞りにしても、いつも自動設定に任せていたのです。カメラの設定をあれこれいじり、さらにアルフィーさんにチェックをしてもらうこと10分、セットアップを完了することができました。長年カメラを扱ってきましたが、これほど多くのことができるとは思いもよりませんでした。次は構成に集中できるようにと、アルフィーさんが設定をモノクロモードに切り替えます。
私たちが撮影を楽しんでいると、アルフィーさんは、光の反射の捉え方、対称性の利用や多角的な視点の取り入れなど、彼が得意とする印象的な写真の撮り方をいくつか紹介してくれました。生き生きとした東京をカメラに収めることへのアルフィーさんの情熱が伝わってきます。と同時に、眼下を行き交う人々、一人ひとりにストーリーがあり、私たちはカメラを通して、どんなシーンを切り取り、どのようなことを物語るのかを、選ぶことができるのだと気づかされました。フロアに立つ、武将であり江戸城(現在の皇居)を築いたことでも知られる太田道灌の有名な銅像さえも、写真の撮り方次第で全く違う姿を見せてくれました。
それから私たちは銀座の街を歩き、印象に残った東京の風景を撮影していきました。アルフィーさんは時折立ち止まると、私たちが気づきもしなかったユニークな光の反射を捉えた写真を撮影したり、「あなたなら、この場所からどのような写真が撮れるか」を私たちに尋ねたりしました。そして、ツアーが進んでいくにつれ、参加者全員が、東京という街に向ける視線を見つめ直していたのです。次の目的地である「東急プラザ銀座」の屋上テラスでは、そこから見える銀座の街並み、皇居の庭園、いくつもの輝く高層ビルが、互いの魅力を競い合っているかのように感じられました。
アルフィーさんからの丁寧なフィードバックと共に写真を見直すと、ツアーを通して自分たちの写真がどれほど変わったのかを実感しました。私たちは皆、それぞれが持つ東京のイメージを象徴するものを撮影していたので、他の参加者の写真を鑑賞することはとても楽しい時間でした。とりわけプロの目線が備わったアルフィーさんの写真からは、彼が語るストーリーが感じられました。東京が放つ煌めきに気づかせてくれた「フォトウォーク」は、この街を見つめ直す価値ある体験でした。帰路に着く電車の中で、私は過ぎ去る街並みを眺めながら、“いい写真が撮れそうだ!”と何度も心の中でつぶやいていました。
一対一、あるいは小グループの半日フォトウォークは25,000円から。どなたでも参加が可能です。アルフィーさんによれば、ほとんどの参加者はスマートフォンを使用するとのこと。携帯電話のGPS機能でルートを追跡すれば、歩いた行程を見直したり、シェアしたりすることができます。
ジャパノラマ
東京フォトツアー
http://www.alfiegoodrich.com/tokyo-photo-tours/
この記事はサム・サン・ジェームズが執筆しました。
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