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巨人、妖精、民話、そして本場の味…!アイルランド料理店「巨人のシチューハウス」
東京都南部、戸越銀座商店街にある「巨人のシチューハウス」は、伝統的なアイルランド料理を食べてみたいという皆さんに、おすすめのレストランです。
巨人のシチューハウス
世界各地の味が楽しめる東京でも、なかなか出会うことができない料理もあります。そして仮に出会えたとしても、はたしてそれが本場の味なのかわからないと思うことがあるでしょう。けれども「巨人のシチューハウス」なら、そんな心配は無用です。この店では、アイルランド出身の店主アラン・フィッシャーさんが少年時代の想い出の味を提供してくれます。
母親の料理をこよなく愛するフィッシャーさん。お母さんは得意のポテトブレッドを作るとき、普通の倍の量を作らなければならなかったそうです。というのも、少年時代のフィッシャーさんは、瓶一杯のバターを片手に抱え、ポテトブレッドが出来上がるやいなやつかみ取り、満腹になるまで食べ続けていたのだとか。
フィッシャーさんはそんな少年時代のエピソードとともに、「母のシチューはアイルランドのダンドーク地方全域で伝説になるほど有名だったんだよ」と冗談めかして語ります。大きな鍋で煮込まれたラムシチューの香りを楽しみに、学校から帰ったことが忘れられないと話すフィッシャーさん。少年時代に味わった喜びを東京の皆さんと分かち合いたいという情熱に溢れています。
不思議な旅?
さて、フィッシャーさんはなぜ日本に来ることになったのでしょう?ご本人が不思議な物語を語ってくれました。物語はフィッシャーさんがエナという名前のレプラコーン(アイルランドの妖精)に出会ったところから始まります。巨人たちが仕掛けた罠に捕らえられていたエナは、「もし逃がしてくれたら、外国で新しい暮らしができるようにしてあげよう」とフィッシャーさんに提案したのだそうです。条件はただ一つ、エナがフィッシャーさんの指にはめた指輪を外さないこと。もしもその指輪を外したら、フィッシャーさんは、たちまちアイルランドに引き戻されてしまうということでした。罠からエナを逃したフィッシャーさんは、すぐさま将来の奥様、アイさんと出会う日本を訪れることになります。二人が出会ったときアイさんは、なんとフィッシャーさんと出会う夢を見たと言ったのだそうです。その続きは言うまでもありませんね。
アイルランドの民話から生まれたこの物語を信じるか、フィッシャーさんがよくある理由、つまり仕事で日本に来たと考えるかは、あなた次第。
後者だと思った方は驚かないでしょうが、フィッシャーさんは新天地であるここ日本で、アイルランド料理と文化を紹介したいという夢を持ちながらも、長年ソフトウェア会社に勤めていたそうです。
輸入品の販売コーナー
アイルランドの味
フィッシャーさんが作るシチューの味を知らずに、少年時代の想い出のシチューに抱く彼の情熱を理解するのは難しいので、私は妻のミワと共に「巨人のシチューハウス」を訪れました。店内に足を踏み入れた途端、五感が刺激されます。カタカタと鍋の蓋が動く音、アイルランドを思い起こさせる芳醇な香り、新鮮な素材を使った目にも美しい料理。期待が高まり、私たちのおなかもグーグー鳴ります。
鍋で煮込まれているビーフシチュー
フィッシャーさんのお店にグリルはなく、あるのは大きな鍋だけ。その鍋で年間6,076ガロン(約2万7600リットル)ものシチューを作っているのだとか。フィッシャーさんは長年の夢の実現に向けて、アイルランドにいる母親を日本へ呼び寄せ、自作のシチューを試食してもらい、昔ながらの味が再現できているかを確認したそうです。そして母親のゴーサインが出ると、2015年2月、「巨人のシチューハウス」をオープンさせたのです。
シチューを提供する準備をするフィッシャーさん
おいしいジレンマ
さて、いよいよシチュー選び。メニューを順に見ていくと迷ってしまいます。魚?ラム?ビーフ?どのシチューにも、程よく味付けされた野菜が適度に入っています。メインディッシュは、新鮮な乳製品から作られたソーダブレッド(イースト菌の代わりに重曹を用いて作る発酵させないパン)と一緒にいただきましょう。本場アイルランドから輸入されたギネスビールやベルファストラガー、マギーズ・リープIPAの他、アイリッシュウイスキーも揃っているので、食事に合わせて楽しめます。
妻はラムシチューを、私はビーフシチューにマッシュポテトとソーダブレッド、そしてハーフパイントのギネスビールを注文。フィッシャーさんが取り分け用のお皿を持ってきてくれました。
ランチにて:ビーフシチュー、ラムシチュー、ソーダブレッド、マッシュポテト、ライス、ギネスビール
そして、最初の一口でシチューの虜に。その美味しさは本物です。妻のミワは洋食にうるさい方ですが、彼女のリアクションは私以上に熱烈なものでした。パンにはバターと新鮮なルバーブソースが付いてきます。まさに王様のためのご馳走です!
最初の一口
文化体験
食事を楽しんだ後は、アイルランド文化について展示している一番奥の部屋をぜひご覧ください。展示品の説明が書かれたフォルダーは、食事の時に渡されます。
多くの日本人がアイルランドについて正しく理解していないと感じたフィッシャーさんは、故郷のアイルランドについて紹介することに情熱を注いでいます。彼は素晴らしい料理人というだけでなく作家でもあり、『A Giant’s Dream(巨人の夢)』(妖精の民話シリーズ)という小説も出版しています。
文化紹介コーナー
本の売り上げは、より大きな施設を創りたいという次の夢を実現するために使われます。フィッシャーさんは、アイルランドの博物館やベーカリー、輸入食材コーナーやバーやステージ、そしてアイルランドに関する書籍を集めた図書館など、さまざまな要素を兼ね備えたアイルランドに関する複合施設を作りたいと考えているのです。
フィッシャーさんの本
素晴らしい食事だけでなく、忘れがたい経験もできる「巨人のシチューハウス」。アイルランドについてさらに深く知るために、そして次はシーフードシチューに挑戦するためにまた来ることを心に誓いました。
フィッシャーさんと一緒にポーズをきめて
そうそう、フィッシャーさんに会ったら、彼の指にはめられた指輪にご注目ください。
レプラコーンのエナの物語、を覚えていますよね?
フィッシャーさんが身に着けている指輪
お店へのアクセスや営業時間、最新のイベント、そして『A Giant’s Dream(巨人の夢)』に関する情報は、以下のサイトをご確認ください。
www.kyojin-stewhouse.com/kyojin-homepage
この記事はガイ・アーノルドが執筆しました。
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